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人間工学応用事例(GPDB)・GPDB表彰

ED-122 鉄道車両用円弧状手すり

画像

概要
製品の概要

通勤車両のロングシートを区切る位置の縦手すりは、つり革を利用しにくい人の支持具として、また、高齢者などの立ち座りの際の支持具として使われています。この縦手すりを円弧状にし、よく握られる部分を通路側に張り出させることによって、立位、座位での使いやすさが向上しました。

人間工学的配慮視点

従来のものは立位客にとっては遠くて、腕を伸ばした力のいれにくい姿勢でつかまることとなり、また、座位客にとっても、これまで明らかにされた立ち上がり補助として適切な位置より近く、立位客のこぶしが顔の近くに来ることによる圧迫感もありました。手すりを通路側に移動すればこれらの問題は解決できますが、大きく移動しすぎると、立位客のスペースが減ったり、乗降の妨げになるという問題が生じます。そこで、身体を支える機能が向上し、かつ乗降などの際に邪魔にならない位置を実験で検討しました。100~150mm程度張り出させることで、立位客は手すりが近くなり、脇をしめてしっかりつかまることができるようになりました。座位客にとっても立ち上がり補助として適切な距離に近づき、立位客のこぶしが顔から離れて広さ感も向上します。最も張り出している部分でも、座位客の膝より内側であるため、立位客のスペースが減少することもありません。座位客の立ち上がり時や立位客に把持される高さを記録し、必要な部分のみを通路側に張り出させた円弧状のデザインも特徴です。

開発秘話

最初の実験では、まっすぐな手すりを平行移動して座面からの距離を変化させ、適切な距離と把持される高さ範囲を明らかにしました。そこから発想されたのは、手すりを折り曲げ、使われる部分を「通路側に平行移動」することでしたが、デザイナーのセンスを経て「円弧状に張り出させる」デザインとなりました。2回目の実験からは、円弧状の手すりを試作して、機能の確認や乗り降りへの影響を検討しました。円弧状となったことで美しく、手も下にすべりにくくなり、製作コストの増加もわずかということです。この形状の手すりは、まず優先席、そしてその他の座席に広がり、現在では1000両を超える車両に使われていますが、このように受け入れられたのは、使いやすさの向上とともに、円弧状のデザインの持つ魅力によるところが大きいものと思います。
違い


推薦者

認定人間工学専門家 鈴木浩明

お問い合わせ
企業名・担当部署名

(財)鉄道総合技術研究所 人間工学研究室

その他連絡先

東急車輛製造株式会社 車両事業部 設計企画部

製品発売時期

2008年

更新日

2008年12月03日



 


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