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ピックアップ がんばる人間工学家!

インタビュー企画 ピックアップ がんばる人間工学家

第2回
     松岡 敏生さん
  (三重県工業研究所 医薬品・食品研究課)

三重県工業研究所は地域の産業振興支援を行っている機関です。技術支援および人材育成に関することや技術相談、依頼試験、企業の人材育成などにも取り組み、県内の産業技術の向上に貢献しています。ユニバーサルデザインや人の計測など、人間工学全般を応用した技術相談、支援を行っている松岡敏生さんを取材しました。


松岡敏生(まつおか としお)
三重県工業研究所 医薬品・食品研究課 主任研究員。博士(工学)。研究領域はリハビリテーション科学・福祉工学・繊維工学・感覚計測など。

八木
第2回目のインタビューは、初回にインタビューを受けましたイトーキの八木が、三重県工業研究所 医薬品・食品研究課 松岡敏生さんにお話を伺います。初めに、お仕事先の概要と、お仕事内容について簡単に教えていただけますか?
松岡
所属は三重県工業研究所で、医薬品・食品研究課と言うところにいます。医療用具・福祉用具の試験研究に関することや技術支援を主な仕事にしていますが、いわゆる福祉用具だけでなく、ユニバーサルデザインと言われるようなもっと広く、人の計測など人間工学全般が対象です。
八木
たとえば?
松岡
最近の事例では、繊維製品、手袋、椅子などがありました。


公設の工業研究所による産業振興・技術支援

八木
技術支援というのは具体的にどんなことをされるのですか?
松岡
製品がよいかどうかを評価した結果から、その先どう改善したらよいかをアドバイスしたりします。今自分たちが持っている知識や技術で対応できないことがあるときには、さらに専門的な知見を持っている方を探して、橋渡しをすることもあります。先日はある医療用繊維の開発についてアドバイスをいただくために、臨床医の方を訪ねました。臨床の経験に基づいた貴重なアドバイスをいただけました。一般の企業の方が、いきなりどこかの病院を訪ねるのはなかなか難しいでしょうし、企業の方の中には大学の先生や病院の先生に聞きに行くのは気がひける、と言う方もいらっしゃいます。人と人や企業と研究機関などを “つなぐ”役割も大事な仕事です。拠点が複数の地域にまたがる企業さんからの依頼を、都道府県の同じような機関のネットワークで解決することもありますよ。
八木
なるほど。三重県の人間工学にかかわる情報の拠点、人の拠点になっているわけですね。かなり積極的に動いていらっしゃるのですね。
松岡
もっと積極的に動くこともありますよ。依頼を待っているだけではなく、”企業キャラバン”と題して、われわれの機関は”こんなことができますよ”と、こちらからプレゼンをして回ることがあります。県内の企業さんに、もっと人間工学を活かしたものづくりをしてほしいと思っていますので。三重で人間工学を流行らそう!と思ってます(笑)。
八木
それは力強いですね。その活動が続いていけば、三重県は「人間工学先進地域」になりそうですね。
松岡
そうなるといいですね~。


人間工学との出会いときっかけ

八木
今のお仕事につくために、どんな勉強をしてこられたのか教えていただけますか?
松岡
学生時代は繊維工学部で、繊維の勉強をした繊維技師です。繊維の試験には風合いなどの感性的な項目がありますし、衣服として着る時の温熱生理などもあります。温熱関連の論文を調べていて人間工学会の論文に行き当たったのが、人間工学にかかわりを持った直接のきっかけでした。
八木
そこが”噛み心地”や”座り心地”につながっていくわけですね。
松岡
そうですね。企業さんに何をやっているのかを一言で簡単に説明しようと思ったら”人に関わることです”と言うようにしています。そうすると納得していただけることが多いです。以前は感性工学と言っていましたし、ユニバーサルデザインといったり人間工学と言ったり、あまりその境界は意識せず、相手の方に理解していただける言葉で表現するようにしています。やりたいことは”人が使うものを作ることを手伝うこと”です。
八木
これからこんなことをしてみたい、ということはありますか?


松岡
三重県の人間工学的、ユニバーサルデザイン的に優れた製品や事例を集めて、学会か展示会で”事例展示”として出展できればいいなあと思っています。県内の企業さんの製品で、試験をしたりしてきちんと作っているものはたくさんあるので、それをもっと世の中にアピールして、三重のものづくりのレベルの高さをアピールしていきたいです。実際にきちんと作った製品でも、もっと研究発表までするのはちょっと荷が重い、というケースが時々あります。まずはそういう事例を集めて、研究的な部分よりも製品のよさをアピールする”グッドプラクティス”として一堂に紹介できるといいと思っています。それでますます人間工学が流行って、三重県のものづくり全体の「ブランド価値」的なものが上がるといいですね。
八木
「三重のものづくり」のブランド価値だけでなく、人間工学自体への理解や期待も高まりそうですね。ぜひ実現してください!


インタビューア:八木佳子(やぎよしこ)
株式会社イトーキ マーケティング本部 中央研究所 Ud&Eco研究室 室長
認定人間工学専門家
製品開発の前段階に当たる調査研究に従事。調査研究に基づく製品の原案の提案や、試作品の評価などを行う

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