お知らせ

投稿日:2011年08月22日||投稿者:JES事務局

The 13th Japan-Korea Joint Symposium on Ergonomics
第13回日韓共同シンポジウム開催報告

早稲田大学国際情報通信研究センター招聘研究員 : キム・サンヒョン
日本大学 : 堀江良典

 日韓共同シンポジウムが2011年6月6日に早稲田大学国際会議場で開催された。本シンポジウムは日本人間工学会(Japan Ergonomics Society, 以下JES)と大韓人間工学会(Ergonomics Society of Korea, 以下ESK)の共同で開催しており、両学会が主催する全国大会のプログラムに持ち回りで2年毎に組まれる。今年はJESの主催となり、日本人間工学会第52回大会の一つのシンポジウムとして位置づけられた。

 日韓共同シンポジウムが正式に始まったのは1996年に早稲田大学で開かれた第37回全国大会のことである。両国間の協定が正式に結ばれ、すべて英語で進行された。その後、2005年、第8回のシンポジウムからは、それまでの経緯を踏まえてより詳細な事項を盛り込んだ協定を再締結し、発表は自国語を使う形になった。今回のシンポジウムも2005年の協定をもとに準備を行った。

 正式準備は2010年9月1日にさかのぼり、早稲田大学で行われた第52回大会運営準備委員会にて準備体制に関する本格的な論議が始まった。シンポジウムの窓口は国際協力委員会が担当した年と大会事務局が担当した年があり、今回の大会では第52回大会事務局が担当することになった。JES側の窓口は堀江、韓国側はハンバット大学のミン・ビョンチャン先生が担当となり、金は両学会の調整を行った。日韓の間で意見を合わせる際に、言葉の違いから生まれる微妙なニュアンスの差が後戻りのできないミスに繋がる場合がある。今回はそれを防ぐためメールのやり取りの際には韓国語の文章に日本語訳をつけ、常に関係者が同じ情報を共有できるようにした。さらに、同年10月11日に韓国の大田市を訪れ、ミン先生にシンポジウムの初案を渡し、宣伝活動の早期開始など協力を申し入れた。また、12月12日にはミン先生が来日し、互いの進捗状況を確認したうえ、ESKの3役の参加について前向きに調整するとの意見を交わした。シンポジウムの演題申込みの受付は第52回大会のスケジュールと同様に2010 年12 月13日からスタートした。早い準備作業や活発な宣伝活動の効果もあり、発表原稿の申込みは日々増え続け、2011年3月7日の締め切りの日には日本9件、韓国24件のアブストラクトが寄せられた。予想より発表演題が多かったので、スケジュールの再構成などに追われたその矢先、3月11日に東日本巨大地震が起きた。

 震災の影響から多くの学会がシンポジウムの開催を中止、延期を発表した。また、大会場となる早稲田大学も卒業式や入学式を取り止め、校内の集会についての自粛が要請され、建物の安全性が確認されるまで立ち入りが禁止された。さらに原子力発電所の問題や、余震が続き、韓国から大会の開催の可否を伺うメールや電話がたくさん寄せられた。4月4日に予定した本原稿の締め切りを急遽4月22日までに延期したが、開催に関する不安の声が相次いだ。大会運営委員会と学会執行部は、東日本地域の会員や多くの関係者が被災されていることや、産業界の逼迫状況等を考慮した上、開催を慎重に検討した。

 その結果、4月12日、斉藤進理事長と河合隆史大会長が日本人間工学会第52回大会の開催に関する声明を発表した。内容をまとめると以下となる。社会的に困難な現下の状況であるが、社会に役立つ実践科学である人間工学を積極的に活用するためにも前向きに大会を開催するよう予定通り準備を進める。今後の原子力発電所や交通機関等々の状況によっては参加者にご不自由をかけることも考えられるが、人間工学が深刻な大災害で失われた生活環境を復興し、産業再生に向けて役立てることができると確信している。このメッセージはすぐ韓国語に翻訳され、ESKにも伝えて日韓共同シンポジウムや第52回大会の準備に問題ないことを伝えた。

 以上のような経緯の結果、6月6日無事に大会日を迎えることができ、日本から9件、韓国からも9件で合計18件の演題が集められた。セッションは4つに分けて行われ、第1セッションPhysical Characteristics / Bio Mechanics、第2セッションPerformance / Measurement、第3セッションDesign / Human Interface、第4セッションWorkload / Universal Designに分かれて進行された。シンポジウムの発表形式は英文のプレゼンテーション資料を基に自国語で発表を行い、逐次通訳を通して日本語または韓国語に訳した。逐次通訳は日本語から韓国語訳は早稲田大学の博士課程のユン・ハヨン君に、また韓国語から日本語訳は中央大学理工学部のミン・ピルギ君に任せ、担当領域を分けることにより、時間短縮や間違いが起こらないように設定した。発表者の論文がまとめられた英文の論文集は68ページの立派なものとなり、日韓共同シンポジウムが回を重ねるごとに質、量ともに充実してきていることが伺える。

 
斉藤JES理事長によるジョン・イスンESK会長の表彰

 

 懇親会では、打ち解けた雰囲気の中で、日韓の発表者、研究者同士による交流が図られた。韓国からの参加者に感想を伺うと、余震や原発問題で参加するかを悩んだが、実際参加してみて、韓国の日常生活と変わらないことが分かったという意見が聞かれた。懇親会の席上、JESの斉藤理事長より、日韓の学術的な交流への貢献を称え、ESKのジョン・イスン会長と国際担当のミン・ビョンチャン先生、イ・ヨンスク先生へ表彰状が贈呈された。

 予期されてなかった大震災の発生もあり、開催されるまで色々と悩みも多かったシンポジウムであったが、このような時だからこそ、日韓の学問的な交流の場を広げ、友好的な仲を保つのに、またとない学会となった。終わりにこのような素晴らしいシンポジウムの実行にあたり、大会を準備・運営された第52回大会運営準備委員の皆様に深く感謝の意を表します。


 


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