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子どものICT活用委員会

ICT機器の利用と人間工学

教育の情報化が推進されており、学校ではICT機器の導入やその活用が進められています。ICTとは情報通信技術(Information and Communication Technology)のことであり、授業の中で、プロジェクターや電子黒板などの大型提示装置やタブレットPCなどの学習者用コンピュータなどが使われています。

日本人間工学会・子どものICT活用委員会では、児童生徒及び教員が学校において安全で快適にICT機器を活用できるように、人間工学ガイドラインの作成に取り組んでいます。特に、児童生徒や学校関係者に分かりやすく、そして実用的なガイドラインとなることを目指しています。

このウェブサイトでは、子どものICT活用委員会での検討を基に、学校でのICT機器利用について、安全面や健康面の配慮をした方がよい点に関して情報を提供します。それにより、児童生徒及び学校関係者に人間工学の視点を伝え、学校でのICT活用を支援するためのものです。

ここでは、授業でのICT機器利用を想定して、ICT機器を用いる「教室環境」について紹介します。また、児童生徒が用いる学習者用コンピュータに焦点を当て、授業で利用する主な「学習場面」についても紹介します。

ICT機器を用いる教室環境

ICT機器を用いる教室環境について、主な留意事項をまとめています。これらは、その要因がICT機器自体や教室の状況によるものです。授業において、教員が留意する点であると言えます。

教室環境
留意事項 対応策や工夫、効果
(1) カーテンによる画面への映り込み防止 教室の明るさを調整することに加え、大型提示装置に光が映り込まないようにカーテンを閉めます。窓からの太陽光の差し込み具合は、季節や時間帯によって変化することにも配慮します。
(2) 外光が映り込まない見やすい配置 太陽光や蛍光灯の映り込みがないことだけではなく、画面に表示されている内容が、どの座席位置の児童生徒に対しても見やすいようにします。
(3) 十分な視距離と姿勢の指導 姿勢を正しくすることで、眼から画面までの距離が短くなることを防げます。また、児童生徒が体を横に傾けているなどの不自然な姿勢は、画面が見にくいことが原因かもしれませんので注意しましょう。
(4) 画面への映り込みの防止 蛍光灯の映り込みの具合は、画面の角度だけではなく、座席配置によって異なることにも配慮します。
(5) ケーブル配線など、安全で使いやすい機器配置 機器をつなぐ映像ケーブルや電源ケーブルなど、誤って引っかけてしまうことがないような配置や整備をします。

学習者用コンピュータを用いる学習場面

学習者用コンピュータの4つの代表的な使い方に注目して、主な留意事項をまとめています。
授業中に教員が留意する点でもありますが、児童生徒自身がそれらの点に配慮してICT機器を活用できるようになるとよいでしょう。

学習場面 留意事項 対応策や工夫、効果
見る・読む 正しい姿勢 従来の学習場面と同様に、ICT機器を利用する際も、無理のない正しい姿勢となるようにしましょう。
十分な視距離 画面に目を近づけ過ぎないようにすることで、目の疲れを軽減します。
見やすい画面の位置と角度 視線が画面に直交するように画面の角度を調整すると、見やすくなります。
蛍光灯などの映り込み防止 蛍光灯などの映り込みがあると、画面が見にくく視覚疲労の原因にもなるため、学習者用コンピュータを傾ける工夫や画面に反射防止対策をするなどして、映り込まないようにします。
画面の明るさ調整 部屋の明るさに対して画面が暗いと見にくくなるため、適切な明るさに調整します。
書く・描く 正しい姿勢 鉛筆と同様に、書くときの正しい姿勢になるようにします。
正しいペンの持ち方 基本的に鉛筆と同じ持ち方をして、無理のない正しい書き方をします。
書きやすい画面角度 画面の傾き具合により書きやすさが異なるため、書きやすいように角度を調整します。
無理のない手首の角度 画面が大きく傾いていると、手首を必要以上に曲げることになるため、無理のないように気をつけましょう。
指での操作とペン利用 目的や操作に応じて指先での入力とペン入力とで使いやすさが異なるため、適宜使い分けます。
撮る 両手で持ちやすい配慮 機器を落とさないように両手でしっかりと持ちます。ストラップを付ける工夫もよいでしょう。
揺れの防止
(映像を見る時の酔い防止)
手振れのある映像は観察時に不快感をもたらすため、揺れないように撮影します。脇を締めたり、三脚を利用したりするとよいでしょう。
周囲の人や物への注意 撮影時は画面に集中しがちですので、周囲の安全に気をつけます。
安全な持ち運びと置き場所 普通教室以外で利用する場合、教室の移動時や、授業中の学習者用コンピュータの置き場所に気をつけます。
発表する グループの人への見やすさ 周りの人が画面を見やすくなるように、映り込みなどに配慮しながら画面を向けます。
画面への映り込み防止 窓際の座席では、発表者が窓に背を向けるように少し移動するのも一つの工夫です。
見やすい文字や図の大きさ 画面サイズとも関係しますが、文字や図が小さく見にくくならないようにします。
持ちやすい配慮 学習者用コンピュータを落とさないようにしっかりと持つなど、安全面にも気をつけましょう。
適宜、机に置くなどの工夫 画面の拡大縮小の操作をする時など、必要に応じて机に置くとよいでしょう。

(イラスト協力:梅澤 佳寿美)

委員会活動に関する発表

● フラットパネルディスプレイ(FPD)の人間工学シンポジウム2015: 斉藤進,“学校教育のICT活用ガイドライン策定への挑戦”, 電子情報技術産業協会(JEITA), 2015.

● 日本人間工学会第57回大会: シンポジウム「子どものICT活用の現状とガイドラインの検討」, 子どものICT活用委員会, 日本人間工学会誌, 第52巻特別号,pp.38-47, 2016.

● 電子ディスプレイの人間工学シンポジウム2017: 柴田隆史,“学校教育でのICT活用における人間工学的課題とガイドライン策定の検討”, 電子情報技術産業協会(JEITA), 2017.

● 電子ディスプレイの人間工学シンポジウム2017: 久武雄三,“ICT端末のための電子ディスプレイの要件と実現のためになすべきこと”, 電子情報技術産業協会(JEITA), 2017.

● 日本人間工学会第58回大会: 柴田隆史, 斉藤進, 青木和夫, 岡田衛, 窪田悟, 栗田泰市郎, 外山みどり, 久武雄三, 宮本雅之, 吉武良治, “学校におけるICT機器活用に関する人間工学ガイドライン”, 日本人間工学会誌, 第53巻特別号,pp.206-207, 2017.

● 文部科学省・「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議(第1回): 柴田隆史, “健康面に関する人間工学的配慮”, 2018.

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