大会長挨拶

まず,コロナ禍の中にもかかわらず,本大会に参加いただいた本学会会員をはじめとする参加者の皆様に心よりお礼を申し上げます。コロナ禍の中で3年ぶりに,日本人間工学会が,第63回大会として,私の故郷である広島県尾道市の尾道市役所本庁舎,しまなみ交流館で現地開催できることを非常にうれしく思います。感染対策に万全を期して,参加者の皆様をお迎えしたいと思いますので,多少のご不便をおかけしますが,参加者の皆様のご協力をお願い申し上げます。

本大会では,「人間と技術の関係を再考する」をテーマとして,特別講演1件,一般講演174件,シンポジウム35件の貴重な研究成果が発表されます。特別講演として,IEA会長,アメリカ人間工学会会長を歴任された,私の長年の友人であるUniversity of Central Floridaのカルボースキー教授に 「Metaergonomics: Artificial Intelligence, Metahuman-Centered Design, and Technological Life」 と題した基調講演をしていただきます。カルボースキー教授による講演テーマは,くしくも大会テーマである「人間と技術の関係を再考する」にふさわしい内容となっております。昨今,ディープラーニングによる(準)自動運転技術,予防安全技術,天候予測技術などが加速的に発展し,ある側面では我々人間の能力をはるかに凌ぐ優秀なツールが世の中に顕在するようになってきました。このままでは,人工知能による 種々の技術的産物が人間を乗っ取るようになると予言する歴史学者も現れ,彼の著書は世界的なベストセラー(Harrari, Y.N.:Homo Deus―Brief History of Tomorrow―,Vintage, 2017)にもなりました。このような世の中だからこそ,人間工学の役割は大きく,人間と最先端の技術との関係およびそれぞれの役割をしっかりと考察し,人間にとって真に役に立つ技術の在り方を究明していく必要があるのでなはないかと考えます。“Fitting the Advanced Technology to the Man”の考え方がますます重要になるのではないでしょうか。カルボースキー教授にもこのような視点に立って,人間工学とAIの関係はいかにあるべきかを講演いただけると思います。また,一般講演,シンポジウム等におきましても,会員,参加者皆様の活発な議論の元,これからの人間工学と最先端技術との関係を見直すことができるような貴重な交流・情報交換の機会になることを願ってやみません。

本大会の開催に際して,尾道市の関係各位,実行委員の皆様,日本人間工学会理事会の皆様,本大会に参加いただき貴重な研究成果を発表いただいた皆様をはじめとして多くの方々に大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。開催地の尾道市は,しまなみ海道の起点と言うこともあって,サイクリストの世界的な聖地ともなっており,観光スポットとして注目を集めています。また,瀬戸内特有の気候で育まれたかんきつ類,魚介類が豊富で,尾道ラーメン,尾道風お好み焼き(広島風とはちょっと違いがあります),オコゼのから揚げなどおいしいものも沢山ございますので,感染対策を十分にされて,是非とも滞在をお楽しみください。

日本人間工学会第63回大会
大会長 村田厚生