3.13 人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−メニュー対話

ISO 9241-14:1997
Ergonomic requirements for office work with visual display terminals(VDTs)−Part 14: Menu dialogues

本Partは、VDT上でのメニュー方式の対話に関する人間工学上の要求事項・勧告を扱っている。本Partの各ガイドラインは、Part 10 で定義した7つの基本原則に対応する形で記述している。規格本体は、メニュー対話手法を適用するのに適した状況、メニューの構造、ナビゲーション、選択肢の選択と実行、メニューの提示方法といった内容から構成されている。

義務として守らねばならない“Shall表現”の規制項目を持たない“Should 表現”のみの勧告規格ではあるが、検討対象のメニュー対話が勧告事項にどれほど沿っているものであるかを査定する適合指標値を求める手続きが、附属書として盛られている。

メニューの表示や構造化に関しての基本的な方針への合意は取れても、詳細化の段階で矛盾する要求項目をどのように調整するかについて、多くの討議があった。そのため規格原案創案時期の1989年には3度におよぶ大幅な書き直しが行われその結果最大公約数的な表現で落ち着いた。その後、2年ほどでCDレベルをクリアし、DIS段階に進んだが、その後の作業はなぜか進まず、利用環境のGUI化に伴う規格内容の陳腐化が危ぶまれた。最終DIS段階後は順調に進展し、ISの発行が行われた。

非常に議論の多い規格原案だったので次のような審議経過を経てようやくISとなった。第8回パリ会議(1989-01-16/19)の議論を元に修正してWDバージョン2が1989-03-17 に、第9回オースチン会議(1989-05-05/07)の議論を元に修正して、バージョン3が1989-07-25 に第10回デルフト会議(1989-10-24/26)の議論を元に修正してバージョン4が1989-11-30 に第11回ベルリン会議(1990-01-08/10)の議論を元に修正してバージョン3.4が 1990-02-27 に作成された。

その後第12回シアトル会議(1990-03-29/31)の議論を元に修正、やっとCDに進むことが出来た(1990-07-26作成)。 その後2年ほど空白があり1992-11-10 に DIS9241-14.2 が作成され、(WG5文書番号N245)、その後も類似の過程を辿り、DISバージョン 3は1994-04-10 に作成(WG5 同N302)、DIS 9241-14.3原案は1995-08-31 に作成(WG5 同N337)、 日本は賛成投票した。結果は賛成16、反対1で可決された。DIS 9241-14.3 は1996-03-21 に作成 され、(WG5 同N352)、 ロンドン会議(1996-02-19/21)の議論に従って修正の後、ISへと移行、ISO Directive 改訂前の規定に従い、FDIS投票を経ないで ISO 9241-14(1997-06-01)として発行された。

日本は草案作成時点から会議に参加してきたが、マンパワー及び会議出席資金が続かないため、規格の大枠作りには貢献できなかった。そうした状況の中で、草案中の具体例が文化的背景によって受け入れにくいものも混在していたのを修正提案する活動をできる範囲の参加として行ってきた。また、本規格が文字ベースのメニューを対象として作成開始されたため、グラフィカルベースの現時点での利用環境に則さない内容になっていることを指摘してきた。さらに、表音文字であるラテン文字使用を前提としているため、表意文字である漢字の特徴を活かす視点に欠けているのが残念であるという意見が国内の委員会から出された。今後の見直しで提案したい。

森川 記



ISO/TC159 国内対策委員会
Last modified: Jun 12 1998