3.8 人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−視覚表示の要求事項

ISO 9241-3:1992
Ergonomic requirements for office work with visual display terminals(VDTs) −Part 3 : Visual display requirement

本規格は VDT用の人間工学規格として、表示の見易さ要求の中核をなすものである。設計視距離を製造業者は明確にし、その設計視距離を元に文字を見込む寸法を視角で規定し、文字構成画素数、輝度やコントラストも規定している。解像度の判定については、画像の細部のコントラストを要求しており、CRTを用いた表示装置の場合に問題になりやすい画像細部の再現性判定基準を明確にし、測定方法は画像の細部を顕微 鏡的に拡大し走査し、輝度のプロファイルを採取する方法を取っている。見易さを考慮した文字フォントを使用することも考慮し、縦線については2画素を用いることができる。

1983年に SC4/WG2 で審議が開始された。1983年末、スウェーデンの WG2委員エストバーグ博士が来日の際、ISOの審議状況について説明、解像度の定量評価方法について日本からも提案するよう動機付けがなされた。1985年にはわが国からも JIS X 6041原案を元に WG2コンビーナに説明を行った。1986年に現JENCが構成され、投票審議が可能となり、1989年から定期的に参加し、日本の意見を反映し、解像度の判定方法や、色ずれの判定方法など、わが国の提案が多く盛り込まれた。1990年5月 DIS投票が可決し、1992 年6月 ISとして発行された。

1997年6月に見直し投票が行われ存続を可決し、内容の改訂、規格体系の見直しを行った。見直しの中身は派生規格である 9241-7画面反射の要求、9241-8表示色の要求を併合し、さらに現在作成中の FPD(Flat Panel Display)の人間工学規格13406-2を併合する方向で検討が進んでいる。
日本は、カラー表示の解像度判定方法、ミスコンバーゼンスの規格・測定法について、実験データを元に提案し採用された。解像度の要求について ANSI規格を元に MTFAで規定しようとしていたが、高精細の表示装置がかえって低く評価されてしまう誤りがあることを、実験を通して証明し、規格案から削除することができた。
今後の課題としては、9241-3、9241-7、9241-8、13406-1、13406-2の統合と、スケーラブル(文字フォントを自由にユーザが選べ、ポイント数を自由に指定でき、ズーム機能などで拡大縮小が自由にできる)なアプリケーションが増加してきたので、その場合の文字寸法や構成画素数について規定(数値を決めるのか、ユーザの自由に任せるとするのか?を含めて検討)していく。解像度の判定に縦線2画素を用いているが、1画素への変更(実際の応用では1画素が多い)の検討などが必要である。

中野 記



ISO/TC159 国内対策委員会
Last modified: Jun 12 1998