1.6 新しい動向:アクセシビリティ規格とユーザー母集団の拡大

長野オリンピックの際、開催されたパラリンピックでは様々な体の不自由な人達の活躍ぶりが多くの人々の感動を呼んだ。スキーの滑降やスケート、果ては容赦のない激しいぶつかり合いの中でゲームが進むアイスホッケーなどは身体障害者のイメージを全く変えさせるに十分であった。

ユーザー母集団(user population)の拡大を基本方針とするTC159では新しい動向として健常者、高齢者、身体障害者、地域性をカバーする人にやさしいタスク志向の技術、ユニバーサルデザインを目指して身障者用ソフトウェア国際規格審議を計画中である。例えば、目の不自由なユーザがマルティメディア画面にアクセスするため 音声情報を如何に活用すべきかと言ったソフトウエア設計指針である。イギリスのラフボロ工科大学人間工学のSuzan Harker 教授がコンビーナを勤めるISO/TC159/SC4/WG5 はVDTの次はユニバーサルデザインだと新提案をした。"Technical Report -Guidance on Accessibility for Human-Computer Interfaces" と題する新業務項目 (NWI)の採否を1998-3-30期限で投票が行われた。

アメリカ規格協会/アメリカ人間工学会共著のANSI/HFES 200 "Ergonomic requirements for software user-interface, Section 5 Accessibility" (「ソフトウェアユーザインタフェイスの人間工学的要求事項−第5節アクセシビリティ」)と北欧の"Guidelines for computer accessibility" (「コンピュータアクセシビリティの手引き」)及びIEC/TC100"Guidelines for the user-interface in multimedia equipment for general purpose use" (「一般向けマルティメディア装置のユーザ・インタフェイス・ガイドライン」)をたたき台としてアクセシビィリティ規格を制定する構想である。投票結果は未着であるが日本は通産省「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」(1995)を紹介し積極的に係わる方向で賛成投票した。

ソウルで開催されたSC4総会ではWG2、WG5が扱う9241シリーズがほぼ完成に近づいたので、次に何を人間工学規格として審議するか戦略を討議する会議を招集することになった。SC4 Chairmans Advisory Group meeting と称してSC4/WGのコンビーナ、副コンビーナが6月にロンドンで集まることになっている。筆者はWG1コンビーナ、WG8副コンビーナであるので出席予定者に入っている。欧米がどのような展望を抱いているか知る良い機会だし、アジア規格を意識した提案も腹案としてある。ただ、BSIから急な日程変更通知があり、出席出来なくなったのは残念である。


ISO/TC159 国内対策委員会
Last modified: Jun 12 1998