ISO/TC159の活動と人間工学関連規格
ISO/TC159国内対策委員会委員長
横井孝志

 平成19年6月にISO/TC159(人間工学専門委員会)国内対策委員長を拝命してからもうすぐ2年が経過します。この間、数多くの皆様のご支援、ご協力を頂きましたことに心から感謝いたします。

 国際標準化機構(ISO:International organization for standardization)は様々な重要技術分野において国際的な標準化や規格策定を推進するために設立された機関です。この機構の中の人間工学を扱う専門委員会(TC:Technical committee)がTC159です。このTC159の活動に参加し、規格を審議・策定する我が国の審議団体が日本人間工学会であり、ISO/TC159国内対策委員会(JENC:Japan Ergonomics National Committee)は、この活動をより円滑に推進するために学会の中に設置された組織です。

 ご存じのように世の中が豊かになるにつれ、安全、安心で使いやすい製品や生活環境へのニーズが国内外で急速に高まっています。TC159で扱う国際規格は、このようなニーズを実現するために必要となる基本的かつ共通の技術事項について、人間工学国際標準を提供するものです。扱う規格の範囲は人間工学的設計の原理、原則等の最も基本的な領域、人体寸法や姿勢・動作に関する領域、機器操作時の情報の提示や入力に関する領域、温熱、照明、騒音等の物理環境の領域など、非常に多岐に渡っています。最近では、これらを横断的に貫く横糸的な規格として、高齢者、障害者配慮を重視したものも検討されています。これらの規格は生活の中で用いる機器や環境の設計に不可欠であるため、TC159はISOの中の建築、自動車、福祉機器、安全等を扱う他のTCにも積極的に情報提供を行っています。

 このようなTC159の活動の一環として、JENC委員会においても様々な活動を行っています。国内対策委員会委員、分科会委員の方々にはTC159関連委員会で提案された規格内容を人間工学の知見や我が国の状況を加味しながら審議して頂き、国際会議の場での内容の加筆や修正への積極的な参加もお願いしております。また高齢者、障害者に配慮した規格作りについては、我が国が世界を先導しており、TC159の中に設けられた高齢者障害者配慮規格を検討する作業グループやアクセシブルデザインに関する諮問グループの議長や幹事は我が国から選出されています。さらに、策定された国際標準を我が国の工業標準として規格化する活動も積極的に行っており、この活動の成果はJISハンドブック「人間工学」等に結集されています。

 経済産業省は国際標準化戦略における重点TCの1つとしてTC159分野を選定し、我が国からの規格提案を積極的に支援しております。すなわち、ISO/TC159国内対策委員会の活動は我が国の標準化政策の一環として非常に重要なものとして位置づけられております。このような意味で、皆様方には人間工学関連の標準化に少しでも興味を持ち、特に若い方々には是非この活動に参加、協力して頂けることを願っております。

平成21年5月


平成21年度人間工学ISO/JIS規格便覧のページ

ISO/TC159 国内対策委員会
Last modified: Jun 5, 2009