1.2 活発な成果:VDTシリーズ完了、ユーザビリティ管理、制御室規格など

TC159の1年間の活動をレビューすると依然活発です。審議中の業務項目は93件で昨年度より1件減って3件増えました。業務項目毎に年度末時点での審議段階を表す全体像は8頁の一覧表に見る通りです。この1年で進展のあった業務項目は網掛けしてあり、合計30件です。特徴は、ISになった11件が最も多く、次いでCDが7件、WDが5件、FDISが4件、NPが2件、DISが1件です。

新規格を以下に示します;1)ISO 15534-1「人間工学−機械設計に必要な開口部寸法−第1部:身体全体で近づいて作業する場合の開口部寸法決定の原理」、2)ISO 15534-2「同−第2部:作業用開口部寸法決定の原理」、3)ISO 15534-3 「同−第3部:人体計測データ」、4)ISO 9355-1 「表示器及び制御作動器の設計における人間工学必要条件−第1部:表示器及び制御作動器と人間との相互作用」、5)ISO 9355-2「同−第2部:表示器」、6)ISO 9241-6「人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−第6部:作業環境の指導事項」、7)ISO 9241-9「同−第9部:キーボード以外の入力デバイスの要求事項」、8)ISO 9241-16「同−第16部:直接操作対話」、9)ISO 13406-1「人間工学−フラットパネルディスプレイ(FPD)を用いる作業−第1部:通則」、10) ISO 13407 「インタラクティブシステムの人間中心設計過程」、11)ISO 11064-3「制御室の人間工学的設計−制御室の配置」です。

以上、新しく国際規格として制定された11件の中5件はCEN主導でISになった15534-1,2,3、9355-1,2です。CENとの調整については色々課題があります。更に注目すべきは9241-6,9,16の3件がISになり、これで17部構成の9241シリーズは全てISになったことです。JENCが1986年大島正光名誉学会長が理事長を務める医療情報システム開発センターのある赤坂ランディックビル会議室で初めて審議した規格原案が9241-3でしたから約15年かかって完成したことになります。関係者各位のご努力おめでとう!と祝杯を挙げましょう。この後は7部構成のISO 18789シリーズ「電子ディスプレイの人間工学的要求と測定技法」がNPで審議開始されました。SC4/WG2が担当します。今度は短期間、5年くらいで処理されるでしょう。

あとの3件はFPD、話題沸騰中の13407対話型システムの人間中心設計過程、制御室の人間工学的設計の第3部です。ISO 13407は認証を巡って国内でも注目度が高く、産官学が協調して目的を効果的に達成することを期待します。国内認証機関がどこなのか可能性の議論はあるが実行性を伴う具体論が未だの様で気になります。JENCはいち早く通産省と連携し広範な専門委員を集めて分科会を組織してJIS化に踏み切り原案を昨年度末に日本規格協会に提案しました。近々JIS規格として制定されることでしょう。活躍の舞台は揃いました。今後は主役の産業界が人間中心設計の意義を正しく理解し、名実ともにパダライムシフトを行動として起こす番です。学会としても引き続き色んな角度から可能な限り産官に協力して行きたいと思います。

この課題は日本では製品やシステムのユーザビリティを幅広く評価できる専門家が少ないと言う意味で人材育成とも絡んでおり、現在学会が法人化と共に総力を挙げて取り組んでいる人間工学資格認定制度の立ち上げと深く係わっていることを指摘しておきたいと思います。

かれこれ10年程審議して来たISO 11064シリーズ「コントロールセンターの人間工学的設計」「第3部:コントロールルームの配置」がいよいよISになりました。産業界への迅速な普及を意図してJENCではFDIS段階でJIS化に踏み切り1999年3月JIS原案を日本規格協会に提出、1999年10月にJIS規格になりました。皮肉なことに規格提案国イギリスでは未だに国内規格になっていないしドイツも未だで、日本はIS 化とほぼ同時、世界で最も早く国内規格化した事になりSC4/WG8会議(マンハイム,1999-3)で各国から誉められました。

急速にIS化が進む共通背景は、欧州を中心に安心できる貿易を積極的に推進するために人間工学国際規格を産業界が必要としていると言う事実です。次から次へと新しい規格提案が出てきています。日本では依然規格はコピーするものとの発展途上国並の発想が産業界に根強く今一度そこからの脱皮を検討しなければなりません。

そういう中で日本から提案した規格原案が国際的に活発に審議されています。SC1関連では精神負荷の測定法、SC3 関連ではコンピュータマネキン、データベース化で、SC4関連では制御室の人間工学的設計原理でFDISになりました。SC5関連では高齢化社会を迎えるに当たって重要な規格がDIS 14415になりました。

次に、前年度当委員会が日本規格協会に提出した7件のJIS原案は最終手続きを経て公式にJIS規格として制定発行されました。1)JIS Z 8503-3「人間工学―コントロールセンターの設計−第3部:コントロールルームの配置計画」[IS0 11064-3対応]、2)JIS Z 8504「同―WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価−暑熱環境」[IS0 7243対応]、3)JIS Z 8511「同―視覚表示装置を用いるオフィス作業−通則」] [ISO 9241-1対応]、4)JIS Z 8517「同―同−画面反射に関する表示装置の要求事項」[ISO9241-8対応]、5)JIS Z 8520「同―同−対話の原則」[ISO 9241-10対応]、6)JIS Z 8521「同―同−使用性の手引」[ISO 9241-11対応]、7)JIS Z 8524「同―同−メニュー対話」[ISO 9241-14対応]です。

JENCは2000年度も積極的に国内規格化を推進する方針で5件の新規JIS規格原案作成を申請し、昨年に比べて3-4倍の予算が割り当てられました。これは人間工学の規格が産業活動の活性化に如何に重要であるかが徐々に理解されていることを象徴していると考えています。


ISO/TC159 国内対策委員会
Last modified: Jun 26 2000