会報・人間工学専門家認定機構 Vol.69

Vol.69 2022年11月15日
会報・人間工学専門家認定機構広報担当

目次

報告

日本人間工学会ワーク・アーゴノミクス研究部会セミナー
第4回 働く環境「コミュニケーション」

浅田 晴之(株式会社オカムラ)

 ワーク・アーゴノミクス研究部会は、人間工学専門家認定機構と共催で「働く環境」セミナーを開催しています。
ウェビナーやウェブ会議などオンラインでのコミュニケーションが増加している折、相談や雑談がしやすいリアルな場でのコミュニケーションも見直されてきました。
そこで第4回目のテーマとして「コミュニケーション」を取り上げ、2名の専門家に講演いただきました。


講演1.メタバースで人々は心をオープンにするか?
オンラインコミュニケーションツールと自己開示への影響 ー
市野 順子氏 (東京都市大学)

 メタバースにおいて、身体的アバタは自己開示と互恵性にどのような影響を及ぼすのかについて紹介されました。
実験の結果、自己開示は、「ユーザと似ていないアバタ」、「似ているアバタ」、「ビデオチャット」の順で促されることが分かりました。自己開示の互恵性は、どちらのアバタでも形成されますが、ビデオチャットでは形成されませんでした。これらのことから、メンタルヘルスやウェルビーイングの領域では、自分とは似ていないアバタを選択できることが有効と示唆されます。また、職場での人材育成での場など、様々なシーンでアバタを使用したコミュニケーションの可能性が提示されました。
ビジネス領域でも注目されているメタバース内でのコミュニケーションのあり方を考えさせられる内容でした。

*自己開示:思考、感情や体験といった自分自身の事柄について、他者に対して言葉によって明らかにするプロセス
*自己開示の互恵性:一人の人間による自己開示によって、対話相手からの自己開示を引き出すプロセス


講演2.テーブルの高さ・大きさが会話者の行動に与える影響
古山 宣洋氏 (早稲田大学

 立ち話や雑談が行えるように、様々な高さや大きさのテーブルが、オフィスの中には設置されています。
テーブルの高さ・大きさが、会話者の快・不快度、雑談する二者の自己接触行動、什器接触行動、協調行動に与える影響について報告されました。
テーブルの天板が低い(82㎝)時は、手で顔や体を触る自己接触が多くかつ長い一方、天板が高い(112㎝)と天板との接触が長いことが分かりました。天板が高く・大きいほうが、低く・小さい場合と比べて、実験の各参加者は、長時間にわたって深く天板を触ることや、二者間で天板接触が同期する傾向があることが明らかになりました。自己接触は緊張を弛緩させる効果があることから、家具の選択によって快適なコミュニケーションを促す可能性を感じました。

報告

報告:日本人間工学会東海支部2022年研究大会

松岡 敏生(三重県産業支援センター)

「活かそう!」人間工学専門家
水本 徹(㈱島津製作所)八木 佳子(㈱イトーキ)

 人間工学専門家認定機構では、支部研究大会や支部イベントで人間工学専門家認定機構及び人間工学専門家の広報活動を行っています。今回は、2022年10月29日(土)に、岐阜県瑞穂市の朝日大学で開催された日本人間工学会東海支部2022年研究大会の実践報告セッションで、水本徹さん((株)島津製作所)より、資格制度の報告、資格取得のメリットやその活用方法などが報告されました。また、東海支部では全国平均と比較して資格取得状況がやや少ないこともあり、今後の資格取得への期待も述べられました。

東海支部研究大会には、78名が参加し、そのうち学部生・院生が42名、小学生が1名と学生の参加が多くありました。研究大会では若手企画「SDGs/SEGs達成に向けたプロジェクト改善エルゴノミクソン」も開催され、学生をはじめとした若手が積極的に参加しており、今後の認定人間工学準専門家の資格取得が期待されます。

専門家の新規登録

(50 音順、敬称略)

  • 認定人間工学専門家
    (2022年11月1日認定)大賀久美、塚原啓介、前田佳孝、山本恒行、餘久保優子
  • 認定人間工学準専門家
    (2022年10月1日認定)髙橋竜馬、古川博之

 

認定状況

2022年11月14日現在(2022年4月1日からの人数増減)

  • 人間工学専門家     213名( +2名)
  • 人間工学準専門家    173名( +4名)
  • 人間工学アシスタント 16名( ± 0名)
  • シニア人間工学専門家   12名(  ± 0名)

編集後記

 全国旅行割も始まりましたが、秋の旅行シーズンから師走にかけては人間工学会の支部大会の季節でもあります。10月29日には東海支部大会が開催されましたが、全国大会に続き3年ぶりの対面開催となりました。感染症対策を施したうえでの開催で、実行委員の先生方にはご苦労も多かったことと思いますが、会場のいたるところで議論が交わされ、また、身近な先生方と再会でき、久々に満腹感?が得られた学会でした。今後の各地の支部大会でも対面開催やハイブリッド開催が予定されていますが、10期幹事メンバーも参加しますので、皆さまとお会いできることを楽しみにしております。

過去のコラム一覧