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ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン
−パソコンを快適に利用するために−
 
 
日本人間工学会
FPDの人間工学ガイドライン検討委員会

このガイドラインは,日本人間工学会 FPDの人間工学ガイドライン検討委員会にて,検討・作成し,1998年4月1日に(財)労働科学研究所出版部より出版されたものです。ノートパソコン利用者に広く利用していただくことを目的に,2001年5月1日にホームページに公開しました。書籍も定価1,000円にて,販売しておりますので,ご購入希望者は下記へご連絡ください。

購入先: (財)労働科学研究所出版部
http://www.isl.or.jp
〒216-8501 川崎市宮前区菅生2-8-14
Tel:044-977-2125,Fax:044-976-8190
E-mail:h.shindo@isl.or.jp

著作権について
当冊子(ホームページ)の著作権は日本人間工学会 FPDの人間工学ガイドライン検討委員会にあります。当冊子(ホームページ)の一部あるいはすべてを複写複製(コピー)する場合は,日本人間工学会の許可を得てください。

このガイドラインは,ノートパソコンに関連した技術上の進歩や利用する皆様のご意見を反映させ,今後も改訂してゆく予定です。このガイドラインに対しご意見のある方は,下記の問い合わせ先までご連絡ください。

問い合わせ先
日本人間工学会事務局 FPDの人間工学ガイドライン検討委員会宛
〒107-0052 東京都港区赤坂2-10-14第2信和ビル5F
Fax: 03-3587-0248, E-mail: jes@ergonomics.jp


目 次
1 はじめに

2 ディスプレイ作業の特徴

3 このガイドラインの対象者及び活用方法

4 ノートパソコン利用のガイドライン

4.1 作業環境,機器配置
4.2 椅子と机
4.3 キーボード
4.4 ディスプレイ
4.5 キーボード以外の入力装置
4.6 作業姿勢
4.7 周辺機器の接続
4.8 機能設定
4.9 外付けキーボードと外付けディスプレイの利用

5 おわりに

付録1.ノートパソコンの人間工学上の特徴

付録2.日本人間工学会「FPDの人間工学ガイドライン検討委員会」構成表


1 はじめに

技術の進展は,暮らしを豊かにする一方で,ときに疲労やストレスなどを増加させる両刃の剣ともなります。 ワープロなどに利用されているディスプレイ機器も,例外ではありません。疲労の少ない快適なディスプレイ作業を実現するために,ディスプレイ作業の人間工学に関するいろいろなガイドラインがこれまでに提案されてきました。これらのガイドラインの多くは,テレビジョンと同じ原理のCRT(ブラウン管)とよばれるディスプレイを対象としています。しかし最近ではCRTに代わり,ノートブック型パーソナルコンピュータ(以下ノートパソコンと呼びます)にみるように,フラットパネルディスプレイ(FPD)が,職場や家庭さらにはモバイル機器の形でヒトの移動時にさえ広く利用されてきています。FPDを搭載したノートパソコンは,携帯性がよく,いつでもどこでも使える特徴を持っています。しかし,CRTとはその形態,機構,光学上の特性が異なるので,これまでとは異なる人間工学上のガイドラインが必要です。

日本人間工学会では,1996年10月に「FPDの人間工学ガイドライン検討委員会」を設置し,液晶ディスプレイなどFPDを搭載した製品に対し,利用上の人間工学ガイドラインを提案することにしました。FPDを用いた製品は数多くありますが,委員会としては,はじめにバックライト付きの液晶を搭載したノートパソコンについて,これまで蓄積されてきた人間工学上の知識や経験を活用することにしました。

以下に述べる内容は,FPD搭載機器を上手に利用する方法を「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」としてまとめたものです。オフィスや家庭でノートパソコンをすでに利用されている方々や,デスクトップパソコンに代わりノートパソコンの新たな導入を考えている方々,さらにはヒトを向いた設計指針(Human-Centred Design)を目標としたFPD搭載機器を開発する方々にも,このガイドラインが役立つと考えています。

 
図1.各種ノートパソコン,サブノートパソコン

2 ディスプレイ作業の特徴

1970年代後半から1980年代にかけ,コンピュータの導入にともない多くの職場でディスプレイ作業が行なわれるようになりました。それにともないディスプレイ作業者の健康問題が社会的関心となり,人間工学や産業医学の領域から多くの研究が行なわれてきました。これらの研究によってディスプレイ作業者を疲労や健康障害から守り,作業の快適性を向上させるためには,使用する機器や作業場の環境に対し十分に配慮することが必要であることが分かってきました。

ディスプレイ作業では,作業時の視距離が短く,また作業姿勢が拘束されがちになります。つまり,視覚系と筋骨格系に負担をかけることになります。症状としては,目の疲れや,首・肩・腕の痛みとなって現れます。最近では,狭い机に大きなCRTディスプレイが持ち込まれたり,またキーボードが分離せずに姿勢が固定されがちになるノートパソコンの利用が増加しています。このような場合には,作業負担が大きくなり過ぎないよう特に注意することが必要になります。一般的に以下のような要因が,ディスプレイ作業で配慮すべきこととして考えられています。

  • ディスプレイ,照明,採光など光環境要因
  • 机,いす,キーボード,それらの配置など機器,姿勢要因
  • 作業場の温湿度,空調,騒音など物理環境要因
  • 休憩時間,職務設計など作業設計要因
  • 健康状態など個人的要因
これらの要因に対し適切に配慮することにより,健康で快適なディスプレイ作業を行なうことが可能になります。

3 このガイドラインの対象者及び活用方法

このガイドラインはノートパソコンを快適に,そして有効に利用していただくために 書かれています。したがって,ノートパソコンを利用している方はもちろん, これから使ってみたいと思っている方,職場の仲間や子供に使ってもらおうと考えている方などにも有効です。 できるだけ「簡単に!わかりやすく!」を考慮していますので, 「自分は初心者だから」とか「難しいことはわからないから」といってあきらめるのではなく, そのような方にこそ,特に役立つ内容が含まれていますのでご活用ください。 またベテランの利用者の方にとっても,ちょっとした快適利用のためのヒントなどが含まれていますので, 参考になると思います。特に長時間ノートパソコンを利用される方は,このガイドラインを参考に,使い方を再検討されることをお勧めします。このガイドラインの主な対象者は次のような方々です。

<このガイドラインの主な対象者>

  • 職場や家庭ですでにノートパソコンを利用されている方(初心者からベテランまで)
  • これからノートパソコンを購入し,利用しようとされている方
  • これから職場でノートパソコンを貸与/譲渡され,利用しようとされている方
  • これからノートパソコンをデスクトップパソコンの代わりに導入を検討されている方
さらにノートパソコンの開発者や販売者,オフィス機器メーカーやオフィス家具メーカー,そしてオフィスを設計する方々にも参考になると思います。

はじめて読まれる方は,できるだけはじめから全部目を通されることをお勧めしますが, 各章の表題と数行の具体的な行動ステップだけでも十分に役に立ちます。まず全体を眺めてみるのもよいかもしれません。解説は理解を深めるために一部細かい記述がありますが,難しいと感じる方はすべて理解する必要はありません。ただし,職場の機器購入の担当者や管理者,管理職の方々は,解説に書かれている内容も理解することをお勧めします。


4 ノートパソコン利用のガイドライン

ここではノートパソコンを利用する際の人間工学ガイドラインを示します。 ノートパソコンは持ち運びが便利で様々な場所で利用できますが,ここでの利用場所はオフィスや家庭などの室内を対象とします。 屋外でのノートパソコンの利用は,別に慎重な配慮が必要であると考えられます。ほとんどの項目においてノートパソコンだけでなく,ノート型ワープロ(以下ノートワープロ)にも適用できますので,適宜ノートパソコンをノートワープロと読み替えてください。本ガイドラインは9つの項目に分けて具体的な利用方法を示します。その概要を以下に示します。
作業環境,機器配置 作業に適した環境づくりをしよう
椅子と机 利用者の体格に合せて椅子の高さを調節しよう
キーボード 好ましい角度にキーボードを調節し, 必要に応じてパームレストを準備しよう
ディスプレイ 画面の角度,明るさやコントラストを 見やすいようにまめに調節しよう
キーボード以外の入力装置 ポインティングデバイスはできるだけマウスも使用しよう
作業姿勢 不自然な姿勢を避け,ときどき姿勢を変えよう
周辺機器の接続 必要な外付け周辺機器を確認し, その設置スペースを確保しよう
機能設定 コンセントに接続し,節電機能や音量などを最適に調節しよう
外付けキーボードと外付けディスプレイの利用 適正な外付けキーボード及びディスプレイを有効に利用しよう

4.1 作業環境,機器配置

作業に適した環境づくりをしよう
  1. 作業に適した環境(照明,室温,騒音等)であるか確認します。特にノートパソコンの設置場所が明るすぎたり,暗すぎたりしないように配慮します。例えば窓を背にしている場合にはブラインドやカーテンなどで調光できるようにします。
  2. ノートパソコンを置く机上は,十分な作業空間を確保します。
     
4.1.1 窓が近い時にはブラインド等で室内の明るさを調節
 <解 説>

ノートパソコンを用いた作業に限りませんが,たとえ人間工学的によく考慮された 機器を使用したとしても,作業環境が悪ければ,快適な作業を実現することはできません。照明状態は 明るすぎても,暗すぎてもよくありません。快適に利用するための照明,温度,湿度,騒音の目安を 表4.1.1に示しますので,それらを参考にしてよりよい環境づくりに心がけてください。

特に照明状態はディスプレイの見やすさに影響します。ディスプレイ上に照明光源 や窓のような高輝度物体(非常に明るい物体)が映り込まないような配置を心がけましょう。一般家庭 の照明はオフィスよりも暗いことが多いため,家庭で夜間に使用する場合には,パソコンの明るさや コントラストを低めに調節した方がよいでしょう(4.4参照)。また集中できるとか,目立ってよいから と言って周囲の照明を消してノートパソコンの画面だけを点灯させて作業することは好ましくありません。 画面が非常に見にくくなる場合を除いて,室内照明は,ふだん新聞を読むのに適した程度の明るさに しておいた方がよいでしょう。

ノートパソコンは比較的小さいので,置くだけであればスペースをあまり必要と しませんが,設置して作業する机の上の空間は十分な広さを確保することが重要です。同じ姿勢を 長時間続けないために,前後,左右にノートパソコンを動かせる余裕があるとよいでしょう。

またノートパソコンに組み込まれたポインティングデバイスは携帯性を重視して いるため,仕事の内容によってはマウスの方が使いやすい場合もあることから(4.5参照), マウスを利用できるスペースの確保も必要です。CD-ROMドライブやフロッピーディスクドライブ, 通信PCカード(モデムカード等)などを接続する場合もあるため,使用する周辺機器(4.7参照) を想定してスペースを確保することが必要です。

表4.1.1 快適作業環境の目安
照 度
300〜1,000 lx
温 度
24〜27℃(夏期),20〜23℃(冬期)
湿 度
50〜60%
騒 音
55 dB(A)以下(注)
(注)オフィスの背景騒音レベルが極端に低すぎる場合,有訴率が増すことも知られています。

4.2 椅子と机

利用者の体格に合せて椅子と机の高さを調節しよう
  1. キーボードの高さを基準にして,前腕がキーボード面と平行となるように,椅子の高さを調節します。
  2. 足が床にぴったりとつかない場合には足台を準備します。
  3. 机の下の空間が十分にとれるか確認します。
     
  
図4.2.1 キーボード面を基準に椅子の高さを調節
 
図4.2.2 足が床にぴったりとつかないときには足台を利用
<解 説>

机の高さが変えられない場合には,椅子の高さはキーボード面を基準に決定します。目安としては前腕(肘から手首まで)がキーボード面とほぼ平行になるようにします。そのとき肘の角度は90度?100度にします。キーボード面に角度がついている場合には,角度がついたキーボード面に前腕が平行となるように椅子の高さを調節します(図4.3.1,図4.3.2参照)。

デスクトップパソコンのようにキーボードの厚みが薄い場合には机上面を基準としても差し支えありませんが,ノートパソコンは厚みがある機種もあります。目安として,机上面から基準キー(ホームポジションキーとも呼ばれ,JIS配列の「は(F)」や「ま(J)」の列のことを言う)の高さが3.5 cm以上の場合には,注意を要します。
椅子を高くすると足が床にぴったりとつかなくなる場合があるため,その場合には 足台を準備し,足がしっかり床につくようにします。椅子を高くすることによって大腿部の空間が 窮屈になる場合がありますので,空間が十分に取れていることを確認します。机の天板の下に引き出し があり,椅子を高くすると大腿部が窮屈になる場合には,引き出しを外してしまう,あるいは後述する 外付けキーボードを利用するなどの工夫が必要になります(4.9参照)

さらに机の下の空間は,奥行きも必要です。ひざが十分に机の下に入るような下肢空間を確保しましょう。

机の高さが調節できる場合には,足が床にぴったりとつくように椅子の高さを調節した後,机の高さを調節するとよいでしょう。


4.3 キーボード

好ましい角度にキーボードを調節し,
必要に応じてパームレストを準備しよう
  1. 姿勢や好みに合わせてキーボードの角度を調節します。
  2. キーボードの手前に楽に手首を休ませる空間を確保します(キーボードの厚みが薄い場合には机上面でもよいでしょう)。
  3. キーボードが使いにくいと感じたら,外付けキーボードを使います(4.9参照)
図4.3.1 角度なし(左)と角度あり(右)の違い−この椅子の高さ・姿勢の
場合には右図のように角度があった方が手首がまっすぐになり,自然となる
 
 
図4.3.2 本体に脚がなくても本を用いて角度をつけることは可能
 
図4.3.3 机上面をパームレストにしている例
 
図4.3.4 椅子が低すぎて,パームレストが邪魔になっている例
<解 説>

デスクトップパソコンのキーボードは通常置いただけで奥が高く,手前が低くなるような角度がついており,また各列のキートップの形状が微妙に異なり,指がフィットするようになっているステップスカラプチャーと呼ばれるものもあります。ノートパソコンの場合には,薄くするためにキーボードの角度が机上面と平行で,キートップの形状も平面に近いものが多いといえます。

ノートパソコンには角度をつけるための脚がついている機種もあるため,まず角度をつける機能がないかを確認します。 たとえついていなくても本や雑誌などをパソコンの後方にはさむことによって角度をつけることができます。手首が不自然に曲がらず,ほぼ真っ直ぐなるような角度がよいといえます。目安としては5度から12度ぐらいの角度が推奨されますが,この角度は利用者の体型や作業姿勢によって使いやすい角度が異なりますので,各自で最も自分で使いやすい,自然に感じる角度を探してください。同じ利用者でも作業時間が長くなり,作業姿勢が変わると,最適な角度が変わってきますので,各個人でも画一的に決めてしまう必要はありません。

キーボードに厚みがない場合には机上をパームレストやアームレスト(手首や前腕を休ませる空間)として利用できますが,キーが机上よりかなり高い場合には,本やタオルなどでパームレストをつくることもできます(市販もされています)。ただしタイピング時にパームレストが邪魔にならないことが大前提ですので,注意して設置する必要があります。最近のノートパソコンにはパームレストが組み込まれているものも多いですが,利用者の手の大きさによって必要なパームレストの奥行きは異なります。目安として下表より自分の手の大きさに合うパームレストの奥行きを確認しておくと参考になります。
 

表4.3.1 利用者の手の長さに応じて必要なパームレスト奥行きの目安
(手の長さ[手長]:手を開いたときの中指の先から手首までの長さ)
 
図4.3.5 パームレストの広さが異なるモデルの例

4.4 ディスプレイ

画面の角度,明るさやコントラストを見やすいように
まめに調節しよう
  1. 天井照明や部分照明,窓などが画面に映り込まないように画面角度を調節します。
  2. 明るさやコントラスト等のつまみがある場合には,明るすぎず,暗すぎない適度な,見やすい明るさや色あいに調節します。
  3. 見る角度によって画面の明るさや色あいが変化する場合があるため,その特徴を知った上で見やすい画面角度に調節します。
  4. 表示している画面情報や使用環境が変化したり,利用者の疲労や順応により,最適な利用条件は変わります。必要に応じて1から3を繰り返します。
  5. ディスプレイが使いにくいと感じたら,外付けディスプレイを使います(4.9参照)
図4.4.1 映り込みを避け,見やすい角度に調節
 
<解 説>

画面の反射率は,パソコンの機種によって大きく異なります。反射率が低いものは映り込みが目立たず,性能がよいといえます。映り込みや反射は,画面になにも表示していないときに特に目立ちますので,チェックしてみてください。使用している機種で反射が目立つ場合には,特に照明などが映り込まないように注意深く角度や設置場所を調節する必要があります。

ノートパソコンに搭載されている液晶ディスプレイ(LCD)は,CRTディスプレイ(ブラウン管)と表示原理が異なります。CRTディスプレイと比較して,表示面が平らで歪みがなく,ボケやにじみもないという利点がありますが,機種によっては見る角度によって明るさや色合いなどが大きく変化する場合がありますので,注意を要します。

パソコンに用いられているLCDの場合には,一般に画面の正面か,あるいは画面のやや上から眺めると見やすい場合が多いため,目安としては正面,あるいはそれよりやや上から眺めるように角度を調節してみるとよいでしょう。中間の明るさや多くの色を用いた絵や写真を表示した場合には,文字・記号だけを表示している場合に比べて,見やすい角度が異なることがありますので,画面によってまめに見やすい角度に調節しましょう。

画面の明るさとコントラストは見やすさに最も関係があります。明るすぎず,暗すぎない適度な明るさに調節します。ノートパソコンの場合には,この調節範囲が狭く,最適な明るさまで調節できない機種もあります。その際には,タスクライト(室内の全体照明ではなく卓上スタンドのような手元で調節できるライト)のオン/オフや設置場所を動かすことによって見やすくなる場合があります。最適な明るさは照明の明るさ(照度)によって変化しますので,画面が暗すぎる(コントラストが低すぎる)と感じる時には,周囲を暗く(画面照度を低く)し,画面が明るすぎる(コントラストが高すぎる)と感じる場合には,周囲を明るく(画面照度を高く)することによって一般に見やすくなります。

バックライト付きLCDは,バックライト点灯後20分程度で明るさが安定します。最適な明るさは,表示している情報の内容によって異なりますので,必要に応じて調節し直すとよいでしょう。例としては文字や記号を読んだり,書いたりする場合にはあまり明るさは必要ないですが,写真や絵などを表示するときには,調節によって画面全体を明るくした方が見やすくなります。また最適な,好ましい明るさは個人の視力や年齢,経験などによって異なりますので,一概に他の人と比較する必要はありません。各個人でも長時間使用していると好ましい明るさが変化する場合がありますので,適宜明るさを調節し直すようにしましょう。

表示されている文字が小さく,読みづらいと感じた場合には,フォントのポイント数を大きくしたり,ソフトウェアによってはズーム機能で150%拡大表示などを選ぶことも可能ですので,ソフトウェアによる機能設定も利用して,文字の読みやすさを確保しましょう。


4.5 キーボード以外の入力装置

ポインティングデバイスはできるだけマウスも使用しよう
  1. マウスの接続が可能であれば,できるだけマウスを接続します
  2. マウス利用時はマウスパッドを使用します
  3. マウスが接続できない場合には,付属のポインティングデバイスの種類を確認し,そのデバイスに応じた使い方を理解します
  4. ポインター(マウスカーソル等)を見失うような状態が生じたら,ポインターの軌跡を表示させるように設定します
図4.5.1 マウスの接続例
 <解 説>
ノートパソコンに標準装備されているポインティングデバイスは,オフィス外のどこでも使えることを考慮しているため,オフィスで使用する場合,仕事の内容によってはマウスより使い勝手が劣ることがあります。ほとんどのノートパソコンはマウスの接続も可能ですので,オフィス・室内での利用では,できる限りマウスも接続して利用します。仕事の内容に応じて標準装備のポインティングデバイスとマウスを使い分けるとよいでしょう。

標準装備のポインティングデバイスはいくつか種類がありますので,その種類を確認し,そのデバイスに応じた使い方を理解することによって,使い勝手が向上します。最近のノートパソコンに付属の代表的なポインティングデバイスは,パッド,スティック,トラックボールです。それぞれ特徴が異なるため,実際に触ってみて,特徴を理解し,仕事や好みにあったものを利用することが大切です。各ポインティングデバイスの主な特徴は以下の通りです。 
 

□ パッド

指などで触れて動かした方向へポインターが動くため, 直感的でわかりやすいといえます。ただし,指で操作する場合には指のどの部分が触れて, ポインターと対応しているかわかりづらい場合があり,細かい位置合わせに慣れが必要です。 機種によってはペンのようなものでサインをしたり,ちょっとした図形を描けるものもあり,用途によっては便利です。

□スティック

JIS配列キーボードの「き(G)」と「く(H)」と「こ(B)」の間にマッチ棒のようなスティックが立っており,そのスティックに力を加えることによってポインターを操作する方式です。力を加えた方向へポインターが動き,また力の度合いでポインターの動く速さが変わります。他のデバイスに比べると慣れるまでちょっと時間が必要ですが,慣れれば快適に操作できます。最大の特徴はタイピングのホームポジション(指の基本位置)から手を動かさずに,すばやくポインター操作が可能であることです。またそのポインティング操作を人差し指で行いますので,細かい位置あわせもやりやすいといえます。

□トラックボール

ボールを回転させた方向へポインターが動き,回転の度合いでポインターの移動速度が変わる方式です。慣れの必要性はほとんどなく,操作の仕方がわかりやすいデバイスであるといえます。特徴としては,ボールの直径が大きい場合には,遠くへすばやく移動できて便利ですが,直径が小さい場合には繰り返し操作が必要になり,その特徴を生かせないことがあります。
 

4.6 作業姿勢

不自然な姿勢を避け,ときどき姿勢をかえよう
  1. 極端な前傾姿勢,後傾姿勢,ねじれ姿勢の継続を避けます
  2. 視距離が短くなりやすいので,40cm以上となるようにします
  3. 手首が不自然な角度にならないようにします
  4. ときにはパソコンの位置を変えてみます
図4.6.1 前傾姿勢で視距離が近くなっている良くない例
 
図4.6.2 身体がねじれてしまっている良くない例
 
  
図4.6.3 手首の角度が左図は尺側へ曲がり窮屈な姿勢,右図は自然
 
<解 説>

自然で無理のない姿勢が基本ですから,極端な前傾姿勢や後傾姿勢は避けるようにします。机上のスペースが狭い場合には,身体の正面ではなく,左右斜め方向にノートパソコンを置いてしまうことが多いため,捻れ姿勢になりがちです。上半身だけを捻った姿勢を長時間続けないようにします。またたとえ負担が少ない基準姿勢でも,長時間同じ姿勢を続けることはよくありません。ときどき姿勢を変えたり,背筋を伸ばしたりしましょう。ノートパソコンは軽くて動かしやすいので,ときどきパソコンの位置を変えることも有効です。

一般にノートパソコンのディスプレイは目よりも低い位置にあるため,見下ろす姿勢になりますが,その際に首を曲げすぎない(頭を前に傾けすぎない)ように注意しましょう。またディスプレイとキーボードが一体化されているため,視距離が短くなりがちですので気をつけましょう。

ノートパソコンのキーボードは機種によって,厚みの違いや角度調節の有無,パームレストの有無など特徴が大きく異なります。それぞれの機種にあわせて自然な姿勢となるように配慮します。特に不自然な手首の角度で,長時間作業することはよくありません。少なくとも次の2点には注意しましょう。

  1. 手首から先が上方向(背屈)あるいは下方向(掌屈)に曲がりすぎていないか
  2. 手首に対して指先側が外側へ曲がりすぎていないか(尺側変位)

ノートパソコンの場合には,キーの大きさ(キーピッチ)が標準キーボード (標準は約19mm)よりも小さい機種があります。キーピッチが小さいと,特に尺側変位が増大し, 窮屈な姿勢になりやすいので,無理な姿勢にならないように心がけましょう。手が大きな男性などで, キーボードが小さすぎると感じる場合には,後述する外付けキーボードを利用するなどの工夫が必要に なります(4.9参照)


4.7 周辺機器の接続

携帯性を重視したノートパソコンは外付け周辺機器が多くなるため,その設置スペースを確保しよう
  1. 接続する周辺機器の大きさ,接続位置などを確認します。
  2. 周辺機器を接続し,設置する場所を確保します。
  3. 各周辺機器を操作しやすく配置します。
     
図4.7.1 周辺機器の接続例(CD-ROMドライブ、フロッピードライブ、マウス)
 
<解 説>

ノートパソコンは小型であればあるほど,机で利用する場合に外付けで接続すべき周辺機器が多くなります。主なものとしてはプリンター,CD-ROMドライブ,モデム,フロッピーディスクドライブ(FDD),外付けテンキーパッドなどがあります。接続方法としては,直接コネクターに接続する場合と,PCカード(JEIDA・PCMCIAでの規格のカード)を経由して接続するタイプがあります。どちらにしても,かなりのスペースを必要としますので,前もってそれらのスペースを確保しておかないと,それらの周辺機器によってノートパソコンの設置場所が決まってしまい,拘束されてしまうことがあります。またプリンターケーブルなども十分な長さがないとその長さによってノートパソコンの設置が限定されることがありますので,注意を要します。

必要な周辺機器を接続したら,それぞれの操作性を確認します。ドライブが横を 向いていたり後ろを向いていては,操作が非常にしづらくなります。また設置場所によっては本体の 電源スイッチやFDDが操作できなくなってしまう場合がありますので,確認します。ノートパソコンは 手軽に向きを変えたり,動かしたりできることが利点のひとつですが,周辺機器の接続によって, 身動きが取れなくなる場合がありますので,設置の際にそれらの接続も考慮する必要があります。 使っていない周辺機器はできるだけノートパソコンから外しておき,必要な時だけ接続するように した方がよいでしょう。

機種によっては専用のポートリプリケータやドッキングステーション(注)が別売 されていることがありますので,必要に応じて利用するとよいでしょう。

(注)ポートリプリケータやドッキングステーションとは,ノートパソコン本体に合体 させて,より多くの周辺機器と接続できるようにしたり,各種拡張ボードなどを利用できる ようにするもので,ノートパソコンの拡張性を高めるものです。


4.8 機能設定

コンセントに接続し,節電機能や音量などを
最適に調節しよう
  1. コンセントに接続し,できるだけAC電源を利用します
  2. 節電機能(パワーマネジメント機能)を理解します
  3. 節電機能,音量などを最適な状態に調節します
図4.8.1 節電など機能設定プログラムの例
<解 説>

ノートパソコンは内蔵バッテリーでの利用を想定していますので,さまざまな節電機能を備えています。特に内蔵バッテリーでの利用時は,一定時間入力がなければ,画面表示が消えたり,データや辞書などを記憶している内蔵のハードディスクが一時停止したりします。通常これら一時停止状態(スタンバイモード,スリープモードなどと呼ぶ)になるまでの時間設定や一時停止する項目の選択などができます。これらが最適に設定されていないと,かな漢字変換に時間がかかったり,意図せずに画面が暗くなったりして,使い勝手が悪い状態になってしまうことがあります。したがって最低限の節電機能を理解し,有効に利用するようにした方がよいでしょう。また,AC電源での利用時とバッテリー電源での利用時で節電機能の時間設定値などを自動的に変更する機種もありますので,オフィスで利用する場合にはできるだけコンセントに接続してAC電源を利用すれば,節電機能をあまり意識する必要はありません。

節電機能以外にもスピーカーの音量やマウスの移動速度なども利用者の好みに合せて調節できますので,前もって調節しておくとよいでしょう。


4.9 外付けキーボードと外付けディスプレイの利用

適正な外付けキーボード及びディスプレイを
有効に利用しよう
  1. 外付けのキーボードとディスプレイが接続できるか確認します
  2. 外付けキーボードあるいはディスプレイを接続することによって使い勝手が向上する場合は,外付け機器を正しく利用します
     
図4.9.1 外付けキーボード,マウスを接続した例
 
図4.9.2 外付けキーボード,マウスと外付けディスプレイを接続した例
 
<解 説>

多くのノートパソコンは外付けのキーボードとディスプレイの接続が可能です。ノートパソコンは携帯性を重視しているために,使いやすさを犠牲にしている場合があります。小型のノートパソコンを長時間連続して使う場合には,人間工学上の配慮が必要です。たとえば,外付けのキーボードとディスプレイを接続することによってそれらの使い勝手を向上させることができます。特に次のようなときに有効です。
 
<外付けキーボードをつけたい場合>

  1. キーが小さく(キーの間隔が1.8cm以下),使いづらいとき
  2. 基準キーが高く(机上より3.5cm以上),使いづらいとき
  3. 配列がわかりにくく,キーボードが使いづらいとき
  4. 数字入力が多いとき

<外付けディスプレイをつけたい場合>

  1. 画面サイズが小さく,見にくいとき
  2. 表示容量(注)が少なく,使いづらいとき
  3. 明るさやコントラスト調節範囲が不十分で見にくいとき
  4. 発色が悪かったり,表示色が足りないとき
  5. 動画を表示した際,画像が流れるとき
 

必要に応じてキーボードとディスプレイのどちらかだけを外付けにしてもよいでしょう。だだし,キーボードだけ外付けにした場合には,ディスプレイが遠くなり,視距離が長くなりすぎないか気をつける必要があります。またディスプレイだけを外付けにした場合には,ノートパソコンのディスプレイが邪魔にならないように配置する必要があります。さらにディスプレイの設定が合っていないと,ちらつき(フリッカー)を生じる場合があるため,チェックして気になる場合には設定を変更する必要があります。

(注)表示容量とは640×480画素や1024×768画素など一画面を構成している画素数の ことです。ノートパソコンの液晶ディスプレイの画素数は640×480や800×600など固定されています。


5 おわりに

日本人間工学会では1996年10月11日に開催された第62回理事会で, 「FPDの人間工学ガイドライン検討委員会」を新たに設置することを決定しました。 委員会を設置した趣旨は,FPDを搭載した製品に対し,利用上の人間工学ガイドラインを 日本人間工学会として社会に提案することにあります。委員会では多くの議論を経た後,はじめにノートパソコンをガイドラインの対象に取り上げることにしました。ガイドラインのねらいとして,ノートパソコンを用いたディスプレイ作業による疲労を軽減するための具体的な使い方を,わかりやすく解説するようにしました。

ノートパソコンや携帯情報端末などFPDを搭載した機器開発は,今後ますます激しい勢いで進展するように考えられます。一方,オフィスでの疲労自覚症状調査や視覚エルゴノミクスの研究成果からは,現在のノートパソコンなどを長時間のディスプレイ作業に使用するには慎重な配慮が必要であるとの指摘があります。快適なディスプレイ作業環境を実現するために,ここに記載した「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」を,機器使用者に限らず,職場での購入者,管理者,さらには機器開発者の皆様の参考として頂ければ幸いです。


付録1.ノートパソコンの人間工学上の特徴
 
ノートパソコンの快適な利用法,使い方を考えるに当たって,まず従来型の デスクトップパソコンとの違いを明らかにすることが必要でした。したがって,このガイドラインの 作成時に,デスクトップパソコンと比較したときのノートパソコン固有と考えられる人間工学上の特徴を まとめました。もともとこのガイドラインが作成されることになった経緯のひとつは,デスクトップパソコンと 比べて多くの違いがあって,これまでのガイドラインが必ずしも適用できないという理由からです。 それらノートパソコンの人間工学上の考慮すべき特徴を知っておくことは,利用者の快適利用の理解を深めるために有意義と考え,以下にまとめたものを示します。ただし,すべてのノートパソコンが以下の特徴を備えているわけではありませんのでその点を考慮して理解することが必要です。挙げられた特徴は,一般のデスクトップパソコンに認められない特徴で,かつ複数のノートパソコンに見られる特徴という観点で選択されています。またパソコンは技術的に日々進化していますので,読者がこのガイドラインを読まれる時にはすでに特徴とは言い難くなっているかもしれません。それらの制限を理解した上で参考にしてください。

ノートパソコンは携帯性を重視しているために,オフィスでの利用では,デスクトップパソコンに比べて一般に人間工学的に配慮が必要な点が多い,という指摘がありますが,逆に優位点も存在しているため,それらについても触れています。以下の項目の文頭に次の記号を用いて示しています。

○:人間工学上の有利な特徴
×:人間工学上の不利な特徴
△:場合によっては人間工学上配慮が必要な特徴


 1.小型・軽量でキーボードとシステムが一体化
○携帯しやすく,いつでもどこでも使える
○映り込みや反射で見にくいと感じたらいつでも簡単に動かせる
○仕事の内容に応じて移動でき,机上を有効に使える
△視距離が一定になりやすい
△システムの発熱がパームレスト等から皮膚に直接伝わってくる
×姿勢を拘束しやすい
×身体の前屈傾向を招きやすい

2.キーボードが厚くなりがちでキートップ位置が上昇(基準キーが高い)
△机上がパームレストとして利用できないため,手首,腕,肩の負担が大きくなりやすい(パームレストがない場合)
×机上面とキーボード面の高さが大きく異なり,不自然なタイピング姿勢にな りやすい

3.キーボード小型化によるキー総数の減少,配列の集約,キーの縮小
×デスクトップキーボードと位置的な一貫性がなく,使いづらい
×タッチタイピングがスムースにできない
×手の尺側偏位及び手の背屈を招きやすい
×2つのキーの同時押しが生じ,使いづらい
×パフォーマンス低下を招きやすい

4.キースイッチのストロークが浅く,クリック感が弱めだが,操作音が静か
○操作中のノイズが小さい
△タイプのフィードバックが小さく,パフォーマンス低下を招きやすい

5.キーボードプロファイル(キーボード面の形状)がフラット,またキートップ形状も凹みが少ない
△2つのキーの同時押しが生じやすい

6.本体へのパームレストの設置
○必要な奥行きがあり,椅子の高さを適切に調節できれば,手首を休める効果がある
○ラップトップでの利用の場合は,パームレストで本体を押えることが可能で使いやすい
×キーボードが厚い場合に椅子の高さが低いとパームレストが邪魔になることがある

7.ポインティングデバイスがマウスではない
○タイピングとのコンビネーションがよい(ホームポジションをキープしやす い)
△ドラッグ時は無理な姿勢になることがある
×狭い空間でポインティング操作を行うため,負担が大きくなりやすい

8.表示面が平らで歪みがなく,ボケやにじみがない(LCD)
○表示面が平らで歪みが全くない
○ボケやにじみがなく,くっきりしている

9.ディスプレイの明るさ/コントラストの調節範囲が狭い
×明るい場所で利用する場合,適正まで輝度/コントラストを上げられない場合がある
×暗い場所で利用する場合,適正まで輝度/コントラストを下げられない場合がある

10.ディスプレイの拡散/鏡面反射率が低い
○明るい場所でもコントラスト,鮮やかさがCRTほど低下しない

11.ディスプレイの位置が低く,チルト角度が上向きになりがちである
○視線が下向きになり,ドライアイになりにくい
○視界が広がり圧迫感が少ない
×天井照明が映り込みやすい

12.動きの速い表示イメージがにじむ(一部のSTN型LCDの場合)
×マウスカーソルの位置を見失い,パフォーマンスの低下を招く
×動画表示の際ににじみが目立ち見にくい

13.ディスプレイの階調のリニアリティがよくない
△高階調での階調間の輝度弁別ができないことがある

14.ディスプレイの見る角度によって見え方が変化する(視野角が狭い)
△輝度均一性や色均一性がよくないように見える
△階調の反転を生じることがある
〇作業している表示内容をまわりから見られにくい

15.電力消費量が少なく,細かいパワーマネジメント設定がある
〇空調への影響が少なく,環境へやさしい
〇比較的音が静か
△バッテリーでの利用時に画面が暗くなることがある
△設定によってはHDDの回転停止頻度が高く,使いづらい(特にかな漢字変換など) 


付録2.日本人間工学会
「FPDの人間工学ガイドライン検討委員会」
構成表
 
委員長 斉藤 進 独立行政法人 産業医学総合研究所
委 員 阿久津正大 玉川大学
阿部 聡 桜ヶ丘中央病院 
斎藤 真 愛知みずほ大学
外山みどり 独立行政法人 産業医学総合研究所 
中野 義彦 沖電気工業(株)
畑田 豊彦 東京工芸大学
堀江 良典 日本大学
弥谷 まどか (株)プロデューサー・アソシエイツ
山下 良蔵 (株)アスキー
吉武 良治 日本アイ・ビー・エム(株)
事務局 玉川大学工学部 阿久津研究室

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FPD の人間工学ガイドライン検討委員会
Last modified: May 10, 2001